2022-23年度 ＲＩ会長
ジェニファー F. ジョーンズ

3月

1月の日本訪問で出会った茶道の大家である千玄室さんに教わったことを、私は一生忘れないでしょう。 千玄室さんは裏千家の前家元であるだけでなく、長年活躍してきたロータリアンでもあります。京都南ロータリークラブの設立に尽力し、京都ロータリークラブ会長、第2650地区ガバナー、国際ロータリーとロータリー財団のリーダー職もお務めになりました。千さんとのひと時を過ごせたことを光栄に思います。人間として素晴らしく、とても楽しい人です。ロータリーで今もリーダーシップを発揮し、積極的に活動されています。日本でのその同じ週、私は、第二次世界大戦で米海軍に従軍し、地区ガバナーを2期務めたユタ州パークシティの100歳のロータリアンのために動画を記録する機会に恵まれました。その方と千玄室さんのお話には通じるものがありましたが、お二人は第二次世界大戦で敵国同士として従軍しました。私が感動したのは、お二人とも平和構築者として人生を送るためにロータリーを選んだことです。私たちは皆、この地球上で最善を尽くそうとしているだけであり、相違点よりも共通点の方がずっと多いということに気づかされました。
このような偉大な方々とめぐり会ってお話をうかがえたことを、この上なくありがたく感じています。

4月

ロータリー青少年ネットワークのご紹介最悪な状況の中から最善のことを引き出すにはどうすればよいか？コロナ禍が世界、そして私たちの生活を一変させたことを忘れる人はいないでしょう。私たち一人ひとりがこの不確実な時を乗り越えなければならず、その影響を逃れられる人は誰一人としていませんでした。私は、これが別の種類のグローバルリーダーシップ、つまり勇気と共感力を備え、かつ傷つきやすくもあるリーダーシップのためのスペースを作り出したと感じています。2020年の初期、私は良き友だちであるアニエラ・カラセドさんとオンラインで出会いました。彼女はそのようなリーダーの一人であり、今月のコラムの残りの部分を彼女に引き継げることを嬉しく思います。

アニエラ・カラセド氏
アメリカ・ミシシッピ州ベイセントルイスRC

2020年3月、私はパニック発作を起こしました。息ができず、胸にひどい痛みを感じました。世界保健機関（WHO）が新型コロナウイルスを世界的なパンデミックと宣言してから数日が経っており、私はロータリー青少年交換で米国に留学中でした。考えてみてください。18歳の少女が、外国語が話されている異国で、わずか半年前に会ったばかりの人たちと一緒に暮らしていたのです。恐怖を感じました。西半球で最悪の人道的・政治的危機の一つを経験したベネズエラで生まれ育った私は、不確実さについてよく知っていました。母はいつもこう言いました。「困難は、解決が必要なニーズに過ぎない」と。
私はインターアクトと青少年交換の友人に電話し、一緒にオンライン会議を開催しました。その目的は、プロジェクトの情報を交換し、隔離生活の中でほかの人たちが行っていることから刺激を受けることでした。最初の会議では、17カ国から70人（主に学生）が参加しました。当初から、隔離中に世界中のロータリーの青少年が自身の経験を分かちあい、プロジェクトのアイデアを紹介してインスピレーションを得るためのオンラインプラットフォームを構築しました。若い人たちをつなぎ、文化を共有し、国際奉仕プロジェクトの新たな協力の機会を見つけるのを援助してくれるメンターやサポーターも探しました。私たちはこのグループを、「Rotary Interactive Quarantine（RIQ）」と呼びました。わずか1年後には、80カ国、5,000人以上の学生と交流していました。チームメンバーの数名は地区インターアクト代表や地区委員会の委員となり、中には国際ロータリーで諮問委員会の委員を務めている人もいます。やがて隔離制限が解除され、参加者のニーズは変化しました。

RIQとしての最後の公式会議で、バリー・ラシン元RI会長からもっと大きな変化を生み出すことへのインスピレーションを与えられた私たちは、RIQを「ロータリー青少年ネットワーク（RYN）」へと生まれ変わらせました。私を含む数名のメンバーが初代インターアクト諮問委員会の委員として選ばれ、ロータリーの青少年のためのビジョンをRI理事会に提示しました。理事会でのプレゼンテーションは、ジェニファー会長とそのチームが国際ロータリーに青少年諮問委員会を設置するきっかけとなりました。私はその共同委員長を務めていることを光栄に思います。ロータリー青少年ネットワークは、ヒューストンでの2022年ロータリー国際大会の分科会で正式に発足しました。インターアクト、青少年交換、ロータリー青少年指導者養成プログラム（RYLA）への参加経験がある私たち5名は、2年前にオンラインで始めた組織を正式に立ち上げるために大陸を旅しました。国際大会は、私たちが初めて直接に会った機会でもありました。私たちが発表を終えたとき、500人以上が総立ちの拍手をしていることに気づきました。目に涙があふれ、興奮と達成感に満たされました。
パニック発作がこのような結果をもたらすとは、誰が想像できたでしょうか。

国際ロータリー第2540地区
2022-23年度 ガバナー高崎　恒夫

“みんなで行こう　この道を”

春めいてまいりました。皆様にはお仕事や奉仕活動で忙しくなされておることと存じます。
ガバナー年度もなかばを過ぎ次年度の準備に忙しい時期に入ってきましたが、まだまだやることはたくさんあります。忙中有閑　金子みすゞの詩に「このみち」というのを見つけて今年度の地区スローガン「みんなで行こう　この道を」と似ているような。いや違っているようなといろいろ考えてみました。
私が考えた「みんな」とは国際協議会で習ったDEIのうちのD（ダイバーシティ、多様性）のことで、　ロータリーの会員も「社会的に成功した男性」から多様な性、職業、年齢の人をと対象にしましょうとの意味を込めたものでした。しかし広く考えたとはいっても、ロータリーは社交の団体ですからどこまで行っても人から離れることはできません。
　金子の詩の「みんな」には榎（えのき）とカエルと案山子（かかし）が出てきて植物と動物とどちらでもないものが　みんなで行こうよ　このみちを　となっています。
「イマジン　ロータリー」と言われて想像力を働かせても、詩人の頭の自由さに遠くおよばないなと思いながら読みました。
　さて　中国から入ってきた思想に儒教と道教があります。それぞれ孔子と老子を師とするのですが、管見では　ロータリーは儒教に近いと認識しています。どこまでも人についての考察で、よく生きるにはどうすべきかなどと考えていきます。
老子も孔子とは逆パターンですが、よい人生、よい社会、良い政治などを考えた人です。さてちょっと離れたところに荘子がいます。大きくは道教側に分類されていますが、中身は牛や木や蝶々、亀など非人間のご意見が載ってたりして異色の面白さです。

私はこれに惹かれていたはずでしたが、地区スローガンを考えるときには頭がすっかり固くなってしまって、交通安全の標語みたいなものが出来てしまいました。日頃は俳味だ、おかしみだなどと言っているのにと反省しております。人生老境に入ると仁義道徳だけではなく、心を遊ばせることもしないと持たなくなってまいりました。皆様はまじめなロータリアンですので、高潔性とリーダーシップでどんどん進んでいっていただきたいと思っております。

“このみち”

このみちのさきには、
大きな森があろうよ。
ひとりぼっちの榎（えのき）よ、
このみちをゆこうよ。

このみちのさきには、
大きな海があろうよ。
蓮池（はすいけ）のかえろよ、
このみちをゆこうよ。

このみちのさきには、
大きな都があろうよ。
さびしそうな案山子（かかし）よ、
このみちをゆこうよ。

このみちのさきには、
なにかなにかあろうよ。
みんなでみんなで行こうよ、
このみちをゆこうよ。

【注釈】二連目の「かえろ」は、蛙のこと。